2019(令和元)年度の全学FD・SDフォーラムを開催しました
2019年9月17日(火)に世田谷キャンパスにおいて、2019年度全学FD・SDフォーラムを開催しました。
本フォーラムは全教職員が一堂に会して毎年9月に開催しており、第1部(午前の部)では本学が中長期計画(アクションプラン2030)に則って進めている教育面での取組について、教職員が主体的に考え、理解を深めることを目的としています。
本学では、「学生が何を身に付けるか」という学修者中心の教育への転換に向けて様々な教育改革を進めています。2018年度には各学部等との議論を経て、その起点となる全学共通の教育目標及び3ポリシーを策定しました。現在、そのポリシーに則って「教育施策に関する基本方針」を定め、学生の主体的学修の促進と学びの質を向上させるため、既存の教育システムの見直しや新たな施策に取り組んでいます。
その一環として、教育目標に掲げた能力を、一貫性をもって段階的に育成するために、カリキュラムの中核に既存科目との関連を意識した全学共通科目の「SD PBL」(Sustainable Development Project organized Problem Based Learning)を、1年次に「SD PBL (1)」、2年次に「同(2)」、3年次に「同(3)」として2020年度の入学生から順次開講する準備を進めています。
また、学部での学修の集大成となる卒業研究でのルーブリックの再整備を進めることで、「SD PBL」や既存科目から卒業研究までの学修プロセスおよび学生の学修成果と教育効果の可視化を可能とし、社会に通用する能力を4年間で育む仕組みが確実なものとなることを目指しています。
このような背景の下、今年度のフォーラムは、昨年11月に開催した第2回大学教育再生加速プログラム(AP)シンポジウムの結果も踏まえて、『学生を育てる評価方法~評価方法の多様性と学修成果可視化の促進~』をテーマに、京都大学高等教育研究開発推進センターの松下佳代教授をお招きして開催しました。当日は本学(法人本部含む)教職員約380名と、本学の連携協定校から高知工科大学、福井工業大学、玉川大学の教職員3名が参加しました。
開催にあたり、主催組織の教育開発機構を代表して皆川副学長・教育開発機構長から、今回のフォーラムでは「教育プログラムレベルと科目レベルとの評価のつなぎ」と「学生の成長」の2点に着目して、教育目標に則りながら学生の確実な成長につなげていくこと、また、学部・学科が組織的に教育活動を展開しつつ、その有効性を把握する手立てとして評価を行っていくためにも、「SD PBL」と卒業研究での取組をもとにしながら松下先生に知見を授けていただき、学内での共通理解を深めていきたいとの挨拶がありました。
その後、教育開発機構FD推進室の髙橋室長による趣旨説明に続いて、「本学の教育改革の現状と課題について」と題して教育開発機構の各担当室長から2件の説明を行いました。
まず、教育アセスメント室の京相室長から、卒業研究ルーブリックの運用状況等について、全学共通のディプロマ・ポリシー(以下「全学DP」)の策定を受けて各学科が運用中の卒業研究ルーブリックの再整備を進めていること、「SD PBL」や3年次での事例研究等との関連科目との接続を重視しながら段階的な能力の開発に向けた評価基準の総合的な検討に着手していることを説明しました。
続いて、教育開発室の岩尾室長から、全学共通科目「SD PBL」の開設について、検討の経緯、本学の教育目標との関係、卒業研究へとつなぐための考え方を示しました。また、既に一部の学部で実践しているPBL科目での学生の感想等を交えて、「SD PBL(1)~(3)」の各科目の目的、開講にあたって全学的に共有しておくべき学習プロセスを説明しました。
引き続き、松下教授から「学生を育てる評価 -プログラムレベルと科目レベルをつなぐ-」と題して講演がありました。はじめに、学習(学修)成果の意味について説明があり、それを踏まえて直接評価と間接評価、量的評価と質的評価、科目レベル・プログラムレベル・機関レベルという学習成果における多様な分類軸の解説がありました。そして、多様な評価方法を使い分け、併用・統合することで学生の学習成果を多面的に把握し、学生自身の学習や教育の改善につなげていくことが可能となる一方、学習成果の評価のメインは直接評価であり、間接評価による代替はできないこと、また、科目レベルとプログラム・機関レベルでの評価ではギャップが生じることなどについて、国内外の事例を交えて説明がありました。その上で、科目レベルとプログラムレベルでの評価をつなぐ一つの方法として「PEPA」(重要科目での埋め込み型パフォーマンス評価)の紹介があり、「SD PBL」から卒業研究をつなぐカリキュラムの整備と、「SD PBL」と卒業研究での評価をプログラムレベルの評価に利用していく本学の計画について、PEPAの観点から有効性や期待が述べられました。
講演後は、松下教授に再び登壇していただき、教育開発機構、都市生活学部環境学部の教員を加えて全体討議を行いました。その中では、卒業研究におけるルーブリック評価の考え方、学生が省察するときの有効な方法などに対して松下教授から助言がありました。また、「SD PBL(3)」は学部を跨いで開講する予定であることから、「SD PBL」と学科等における学位プログラムをどのように関連付けていくかが今後のポイントになるのではないかとの見解も示されました。
閉会にあたり三木学長から総評があり、松下教授への謝辞が述べられた後、本学における卒業研究での効果や役割について課題意識を持って引き続き検討を行っていくこと、教育改革を推し進めていくためには、本日松下教授から示していただいたような方法論や、実際の授業におけるグッドプラクティス、あるいはうまくいっていない事例も含めて学内で共有しながら努力していく必要があるとの話がありました。
今回のフォーラムは、教職協働によって本学の特色や個性を活かした教育改革を進めていくにあたって、その中核となる施策についての具体的な内容を全学で共有するとともに、体系的で組織的な教育活動を展開する上で益々重要になる学修成果とその評価について多くの教職員が理解を深めることができ、貴重な機会となりました。
皆川教育開発機構長による開会挨拶
京相アセスメント室長による説明
岩尾教育開発室長による説明
松下教授による講演
全体討議
三木学長による総評
主会場(21C教室)の様子
副会場(22C教室)の様子