第1回 APシンポジウムを開催しました
平成29年11月17日(金)、世田谷キャンパス21C教室において「東京都市大学第1回大学教育再生加速プログラム(AP)シンポジウム」を開催しました。当日は定員を超える212名(大学・高校・企業関係者105名、本学教職員107名)の参加者のもと、活気溢れる雰囲気の中でシンポジウムがスタートしました。
開会にあたり、本学学長の三木千壽より、記憶型、知識詰め込み型となっている多くの学生を、社会が求めている人材、思考力・判断力・表現力を備え自分で課題を見つけて解決していく人材に育てていくことがいまの大学教育の果たすべき役割であり、本学においても世界で活躍できる人材を育てるために、いかに真の学びの大切さや面白さに気づかせるのか、真の学びへのモティベーションを持たせるかが大きな課題になっていることから、本学の事業報告に対して厳しく批評していただきたいとの挨拶がありました。
開会挨拶(三木千壽学長)
引き続き、文部科学省高等教育局大学振興課 大学改革推進室改革支援第二係長・河本達毅氏より、「学習者の成長と大学教育の質保証 -大学教育再生加速プログラムを通じて-」と題して基調講演があり、社会に通用する学修成果、主体的な学び、APをはじめとする高等教育政策及びテーマⅤの事業について、「キャリア教育」の視点から体系的にお話をしていただきました。
ご講演の中では、学生の多様化、とりわけ「受け身の学生」に対応するべく、職業・社会との接続の観点から大学教育が「供給」から「応需」への変遷が求められており、汎用的な能力の修得が目的化してきている。そうした文脈からも、「何を教えるのか」よりも、学生がそのカリキュラムによって「どのような能力が身に付くのか」という、学生中心の大学教育への転換が求められているという説明がありました。そして、学生の学修成果、学士力、質保証を巡る最新の動向を交えながら、「学生の主体性を引き出すこと」と「学修成果に基づく質保証モデル」の共存を考えたとき、どのように大学教育の質保証を進めていくべきかという課題、テーマⅤ採択校としての役割、さらには学修成果を社会に示すだけではなく学生支援にも活かせる仕組みとしての「日本版ディプロマ・サプリメント(仮称)」の開発への期待についてもお話がありました。
基調講演(文部科学省 河本 達毅 氏)
基調講演時の会場の様子
本学事業報告①「学びの足跡の見える化による卒業時の質保証」では、教育開発機構副機構長・永江総宜より、学生自身が自己理解を深め、成長を実感できる教育の必要性を背景として、AP採択以前から進めてきた中長期計画(アクションプラン2030)における取り組みをもとに公募申請を行ったことを説明しました。そして、採択後における、社会に通用する学修成果とその評価のあり方に関するこれまでの学内検討プロセスと、卒業生調査・人材ニーズ調査・学生実態調査等の結果から見えてきた本学学生の特長と課題を報告しました。その上で、学生が主体的に成長し、社会に通用する学修成果を獲得して卒業できるよう、GPAや卒業研究ルーブリック等の既存評価方法の再点検・整備や、学生の成長支援ツールとしてeポートフォリオ等の基盤構築を行っていること、さらに、企業等に学生が培った学修成果を提示できるようディプロマサプリメントの開発を進めている状況を報告しました。
事業報告②「プレ・ディプロマサプリメントによる学生のキャリア形成と成長支援に向けて」では、教育開発機構室員・住田曉弘より、本学独自のシステムである「プレ・ディプロマサプリメント」に焦点を当て、その発行を可能とするeポートフォリオの開発に至った背景と現在の進捗状況、今後の展望を報告しました。また、昨年度実施した企業への人材ニーズ調査において得られた、ディプロマサプリメントの有用性に関する回答結果を参加者と共有しました。なお、現在の課題や論点として、システム開発後の学生の利用促進に向けた施策の検討、個別学修支援の徹底に向けた学内の理解促進と体制構築が挙げられ、今年度は学生が様々な活動に主体的、積極的に取り組み、プレ・ディプロマサプリメントに記録できる活動内容とそれを支援する学内体制の双方の充実に努め、次年度は学生による活用とその検証を進める計画であることを説明しました。
事業報告①(永江教育開発機構副機構長)
事業報告②(住田教育開発機構室員)
休憩を挟み、シンポジウムの後半はパネルディスカッションを行いました。パネリストに文部科学省・河本達毅氏、東京都立西高等学校主幹教諭・寺島求氏、リクルートワークス研究所主幹研究員・豊田義博氏、沖電気工業株式会社 情報通信事業本部IoTアプリケーション推進部統括部長・藤原雄彦氏、モデレータに大阪大学高等教育・入試研究開発センターの山下仁司教授をお迎えし、本学AP事業推進責任者である副学長/教育開発機構長・湯本雅恵を加えた登壇者により、熱い議論が展開されました。
まず、社会に通用する学修成果、能力、人材について、本学の検討結果をもとに議論が行われ、パネリストからは「知識・経験・自信などをもとに自分で判断することができる力」「主体的な学修とは自分の置かれた環境や自分の学修状況を振り返り、それに対して自分で判断し、修正していくこと」「企業に入ったときには基礎力と専門力以上に高い環境適応性が必要」「社会課題のニーズを満たすために顧客と信頼を築くことができる自律型人材が求められる」といった意見が挙がりました。
次に、ディプロマサプリメントとプレ・ディプロマサプリメントについては、「コンピテンシー基礎力とリテラシー基礎力は蓋然性が気になるので評価指標の一定の標準化や明確化が求められる」「アセスメント方法とその妥当性に留意することが必要」「企業等に学修成果を発信するための使途と、学生を成長させるツールとしての使途の2つの性質を持つものとして機能するのではないか」「学生自身がゴール設定をし、教職員の支援を受けることでストレッチ目標を掲げてそれに向かってチャレンジしていくことが重要」「学生が成長するための仕組みや取り組みを高校にも積極的に示していくことで高校生の大学選びにも寄与するのではないか」等といった多くの意見が出されました。また、パネルディスカッションの最後には、この取り組みをカリキュラム・ポリシー及びカリキュラムとリンケージさせていくことの重要性について言及がありました。
シンポジウムは盛況のうちに閉会となり、今後の取り組みに向けて大変有意義な機会とすることができました。また、冒頭の学長挨拶にありましたように、当日ご紹介できなかった質問内容やアンケート結果も含めて今後の実行段階における貴重な意見を得ることができました。平成30年度にはプレ・ディプロマサプリメントの活用を通じた学修支援の試行を開始する計画としているため、次回シンポジウム(平成30年度中に開催予定)ではその段階での成果や課題を広く発信し、共有できるよう、引き続き本事業の推進に尽力してまいります。
パネルディスカッション
モデレータ・山下 仁司 氏(大阪大学)
河本 達毅 氏(文部科学省)
寺島 求 氏(東京都立西高等学校)
豊田 義博 氏(リクルートワークス研究所)
藤原 雄彦 氏(沖電気工業株式会社)
湯本 雅恵 副学長(教育開発機構長)
パネリストによる活発な議論が展開
パネルディスカッション時の会場の様子